第6話 「緩やかな街道の途中で」
朝日が昇り、正午になり、夕日が見え、夜になり。そしてまた朝が来て・・・
その繰り返しの昼下がり、西の町へ向かって進む勇者とそのお付き。
先頭を歩くミノリゴは不安そうに何度も後ろのヒビキのほうを振り返る。
「大丈夫ですよ、そんなに怯えなくても。
ここら周辺のモンスターはさほど強くありません、貴女でも倒せるレベルですから」
「だけど・・・大勢でかかってこられたら・・・」
びくびくと辺りを見回し警戒するミノリゴ。
道端に落ちている大き目の木の枝を拾い上げると、不慣れに構えた。
それを見て、はっとしたかのようにヒビキが口を開ける。
「あぁ、そうだ。忘れていました」
そう言うとヒビキは立ち止まり、荷物をあさりだした。
ミノリゴはその横にちょこんと座り、何だろうと見ている。
荷物から出てきたのは、短剣と片手剣の中間ぐらいの長さの剣だった。
片刃で、柄の部分で大きな宝玉が着いている。
「ミノリゴ、貴方の武器です」
そう言ってヒビキは取り出した剣をミノリゴを差し出した。
ミノリゴはびくっとしたが、恐る恐る受け取る。
剣は見た目より軽く、ちょっと大きめの包丁のような感じがした。
「これは・・・?」
「風王様が貴女にと、用意してくださったものです。風の王国の国宝でもある名剣・・・」
ぇ、これが名剣!?
突然渡された剣の価値の高さにミノリゴの毛は逆立った・・・が
「・・・の模造品、だそうです」
「・・・偽物、ってこと?」
「えぇ、そうなりますね」
偽物と聞いて拍子抜けした。なんだぁ、と思ったが
あぁでも、本物持たされる方が気が重いから・・・こっちの方が良いやと逆に喜んだ。
「偽物とは言え、紛失した本物に限りなく似せて作った物ですから、武器としてもそこそこ使えると思いますよ」
「本物・・・なくなっちゃったんだ?」
「と、聞いています。ずいぶん前にらしいですが・・・」
「ふぅ~ん・・・」
ヒビキのうんちくに耳を傾けながらミノリゴはその剣をじっと見た。
成り行きで勇者になっちゃった僕にぴったりの武器かもしれない。
などと、一人で納得しながら自分の利き腕とは逆の、右肩にくくりつけた。
「ありがとうヒビキ。これでちょっと怖くなくなったよ」
「それなら良かった。でも、油断はしないでください」
「う、うん・・・。それじゃ行こうか」
ミノリゴは立ち上がるとてくてくと歩き出した。
ヒビキもそれに続いて歩き出す。
目指すは西の町。そこに付くまではもうちょっとかかる。
(早く町につかないかなぁ・・・ついたらご飯いっぱい食べて宿屋で・・・)
何て事を思いながらミノリゴは何気なく左のズボンのポケットに手を入れた。
硬い石のようなものが入っていたが、気に留めなかった。
その石が、抽選の時自分を勇者に導いた石である事
そして、入れたはずがないのにいつの間にかポケットに入り込んでいた事
ミノリゴは全く気付かず、街道を進んでいく・・・・・・。
TO BE CONTINUED
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